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最近、不本意ながらも人前で足を引きずらなければならない場合が多いので、それについてのエクスキューズが必要になってくる。不本意ながらね……。「足を痛めてしまって……」と濁して苦笑いをすることも可能だが、そこはそれ私の性格だから、あえてカミングアウトすることになる。そして撃沈。痛風について何も知らない御仁は別として、それ以外は判で押したように、というより陳腐なシナリオに乗って演技している役者のように、ニヤッと笑ってただ一言、「贅沢病ですね」。見せてあげたい、皆同じ。
そもそも『痛風日記』は、この「贅沢病」という言葉に憤慨して始めたのだ。私も馬鹿じゃないので、この言葉に「社交辞令」が含まれていることは理解している。面と向かって「この貧乏人!」と罵られるよりは余程良い。だがはっきり言って贅沢病というのは間違いだ。いや古い常識と言った方がいいだろう。考えてみてほしい。全世界でメタボリック問題が叫ばれるこの飽食の21世紀に、いつまでも痛風だけをつかまえて贅沢病もないだろう。 この古い常識が生まれ、未だに我々が痛風だと告げると、気の毒だと言われながらもどこか冷ややかで、多分に面白がっているように見うけられる背景には食事がある。いわゆる「いいもん食ってるから自業自得」というやつだ。この食事自体が、今では痛風の要因としてはさほど優先順位が高くないので、そこからして間違っていると言えなくもないのだが。 まあいい。その食事についてもう一度書いてみる。痛風(正しくは高尿酸血症)の原因として、昨今よく聞かれる言葉はプリン体。その他に過食やアルコール、塩分も重要な要素なのだが、それは他の病気も同じこと。この痛風特有のプリン体が多く含まれる食品が高価で希少なものばかりなら、贅沢病の誹りもあえて受けよう。でも、必ずしもそうではないのだよ。 高プリン体食品とは、簡単に言ってしまえば細胞数が多い食品。コレステロールや脂肪とはちと違う。普段よく口にするものの中で抜きん出て多いものを挙げれば、動物の内臓(特にレバー)、イワシ、カツオ、サンマ、アジ(これらは干物にするとさらにプリン体アップ)等。ヘルシーと言われる魚介類に多く、肉類は部位によってはそうでもない。ここに挙げたものが贅沢なのか?むしろ他の食材よりはお手頃価格ではないか。ウニ、カニ、エビ、カキ、スルメイカ、白子、牛ヒレ等にも多いが頻繁には食べない。これらを毎日食べ続けた結果の発作なら、贅沢病と言われても仕方ないが。 要は成分。価格ではないし、(基本的には)美味しさでもない。つまり、プリン体は食品の旨味成分に含まれてはいるんだが、旨味成分が含まれる料理が全て旨い料理というわけではないだろう、というわけだ。そして、さらに言えば、数十年前には贅沢と言われた料理でさえも、今は誰でも食べることができるではないか。痛風が贅沢病というのは、世の中全体が貧しくて痛風になるはずがない時代の常識。そんな世の中で何不自由なく贅沢な食事ができて、結果痛風にもなる一部の富裕層をやっかんで生まれたのだ。もはや現代の日本で通用する常識ではないのである。 ところで先日、とあるレストランで食事をした時に「フォアグラのオムレツ」というものがあって、これが実に美味だった。もっと食べたい。ビュッフェスタイルなのでおかわりは自由。なのだが私には躊躇する理由があった。私は現在なぜかコレステロール値が安定しないため、普段から卵は控えているのである。だいたい3日に1個以下。鶏卵はプリン体が少ない優良痛風食で好きなのだが。 結局一皿でやめておき、心の中で自分の自制心に拍手を贈る。偉いぞ。ところがもっと重要なことに気がついたのは、レストランを出た後だった。「そういえば、フォアグラって、肝臓だよな……」。量さえ気をつければプリン体恐るるに足らずと思っている私でも、このレバーだけは別格。レバー・アンキモに手を出して一発発作という体験談をこれまで何度も聞いているからだ。なのに卵だけを警戒していて、フォアグラは全くスルー。危ない危ない……。私的に普段無縁の一般常識だもんね。つまり、私の贅沢病なんてこんなものなのだ。
by assy109
| 2008-08-22 19:51
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